<help+■+(to)...>の“to”は理由も無く“省略可”なのではない。違う感覚があるから違う表現がある。
使役動詞では、動詞の持つ意味内容から、to不定詞ではなく原形不定詞の方が相性が良くなることを昨日書きましたが、
使役動詞と同様に、“対象”をある状態に変えていく感覚を持ちながらto不定詞を用いない場合がある動詞が他にもあります。
それは“help”です。
『ALL IN ONE』の解説では次のように書かれています。
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「help O to Vb」は、toを省略して「help O Vb」とすることができます。(toを省略した形の方がよく用いられます)。「help O to Vb」が可能な動詞の中でtoを省略できるのはhelpだけです。
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『省略できる』ことは書かれていますけど、何故、to不定詞も原形不定詞も用いられるのか?その理由は書かれていませんね。
今までその理由がきちんと説明されたものに出会ったことがありませんでした。
これも使役動詞と同様に「そういうものだから…」と思っていました。
私が勉強不足のせいもありますけど(笑)
でも、<V+■+to...>のカタチや使役動詞のところで整理したように、to不定詞の“to”の感覚が分かればどうということはなかったですね。
helpでは、to不定詞のtoを省略する習慣がたまたま偶然生じたわけではなく、
to不定詞を用いたほうが話したい感覚に合う時と、原形不定詞を用いた方が感覚に合う時とがあるから、
両方を用いているわけです。
よくよく考えてみると当たり前です。
ある人を助けるとき、<V+■+to...>のカタチと同様に、“対象”をある状態になるように促すだけでよい場合と、
使役動詞と同様に、強引にでもある状態にしていかなければならない場合とがあります。
何度もゼンマイ仕掛けのオモチャの例を挙げて申し訳ないですけど、、
<V+■+to...>のカタチは、『オモチャの方向をクルッと向ける感覚で“対象”をある目標(行為)に向けて促す感じ』で、
<V+■+...(do)>のカタチは、『オモチャをダイレクトに、ある目標(行為)まで持っていく(一致させる)感じ』なわけです。
これをhelpに当てはめてみましょう。
例えば、海で溺れている人を助けるとき、「陸の方向は向こうだよ!」と言って溺れかけている人を促しても何の助けにもなりません(笑)
to不定詞の感覚では助けにならないわけです。
こういう場合には、強引にでも陸に連れて行ってあげないといけないですよね。これは使役動詞と同様にtoのない原形不定詞の感覚です。
でも、人を助けるときには、いつもいつも強引に助けてあげるのが良いとは限りません。
助けたい人(対象)が、ある程度、自分でどうにかできる能力があるのなら、アドバイスしたりちょっとした手助けだけで良いかもしれません。
そういう時には、to不定詞の感覚の方が合っていますよね。
このようにhelpは、to不定詞にも原形不定詞にも合致する感覚(意味内容)を持っています。
たまたま「toを省略してもよい」わけではなく、表現したい内容やニュアンスに合わせて使い分けていくべきだと思われます。
逆に、この感覚が分からないと、うまくニュアンスが伝わらないのではないでしょうかね?
英文法のルールがあるから省略できるのではなく、
表現したい感覚に違いがあるから、違う表現がある。
これを無視した教え方をしすぎているのではないでしょうか?
英語はやたらと“勉強法”ばかり強調されますけど、
「どのように勉強するか?」よりも「何を勉強するか?」の方がよほど大事じゃないのでしょうかね???
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